一括借り上げ保証や単に借上げ保証などと呼ぶ場合もありますが、入居者に転貸することを目的に管理会社が一括で借り上げる仕組みです。

貸主はオーナーではなく管理会社となります。

ほとんどは新築時から10年~30年の期間借上げ保証するという内容が多く、逆に築古の中古物件でサブリースを受託してくれるケースは稀です。しかも1棟ではなく1戸だけとなると、さらに敬遠される傾向が高いです。

保証してくれる家賃はどれぐらい?

一般的には賃料の10%~20%くらいの手数料を引いた金額となりますので、設定家賃の80%~90%が保証されます。

ただし、設定家賃の査定は相場よりも低めに設定されるケースが多いです。これは保証する管理会社側も確実に入居者がつく設定にしておきたいという事情があるからです。

また、フリーレント期間として最初の2~3ヶ月は家賃が入ってこない期間が設定されます。

借上保証のメリット

賃貸経営をしていくうえで悩みの種は大きく4つあります。

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  1. 空室をどう解消するか
  2. 入居者トラブル対応
  3. 建物や室内設備等の維持管理
  4. 家賃回収、滞納の問題

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なかでも、もっとも頭を悩ますのは空室リスクです。これらリスクに関係なく一定額の家賃が安定して入ってくるのは大きなメリットです。

借上保証のデメリット

サブリースを引き受けてくれる物件は限定される

空室が長引いて何とかしなければ、という段階でサブリースを検討されるオーナーさんもいますが、そんな物件はそもそもサブリースを受けてもらえません。誰が見ても決まりやすい物件(駅から近い、築が浅い、家賃が相場より安い)が対象となるのです。

礼金と更新料が入ってこない

貸主が管理会社となりますので、礼金や更新料はすべてサブリースを受託した管理会社に入ります。

サブリースのリスクや問題点

保証賃料減額リスク

最初は30年間、一括借り上げ保証するということで、当分賃貸経営の悩みから解放されると思いきや、実は、保証賃料の見直しは2年ごととかに行われ、「このままの家賃では厳しい」という交渉が入るようになります。

周辺相場と比較してあきらかに高いということなら納得せざるを得ない場合もありますが、「会社の経営が厳しいから協力してほしい」というような納得しがたい理由で交渉される場合もあるようです。

中途解約リスク

さらにそれを渋ってると、今度は一方的に中途解約の申し出が来るケースもあります。実は30年借り上げ保証となっていても、契約書上は中途解約できる内容になっているのです。

実際に、サブリースを途中で切られて、その後に空室が増えて困っている、何とか空室を解消したいというご相談が多数寄せられます。

サブリース会社の倒産リスク

サブリース会社も空室率が上がり、賃料が下落すると経営が厳しくなりますので、倒産するケースも出てきます。その場合、サブリース会社からの家賃の振込が滞ることもあります。また面倒な契約引き継ぎの手続き等をしなければならないだけでなく、サブリースを引き継いでくれる会社が見つからない場合もあります。

サブリースとリノベーション

中にはサブリースとリノベーション、リフォームを組み合わせるプランも存在します。

これは初期費用0円でリノベーションやリフォームをできる、というような仕組みで、一見美味しいことづくめのような気がします。

ただ0円といっても業者が赤字を切ってリノベーションしてくれるわけではありません。もちろん月々のサブリース手数料から工事代金を捻出することになるので、通常は契約期間5年間などの縛りがついているのが一般的です。

何がなんでもリスクを取りたくない、というオーナーさんには向いているのかもしれませんが、受けてくれる地域や物件の条件なども厳しいので、それで受けてくれるような物件なら、逆に言えばサブリースしなくても空室リスクが低い物件ということなのです。

せっかくリノベーションして空室リスクが低くなってリターンを取りやすくなったのに、ちょっともったいない気がしますね。

大谷昭二(日本住宅性能検査協会理事長)